広田山公園のコバノミツバツツジ群落は神苑内二万平方メートルにわたり十数ヶ所に分かれて大きな群落を形成し、総株数は2万株にのぼると推定され、昭和44年に兵庫県指定天然記念物に指定されました。
古くは元禄年間人文にも詠まれ、元禄・寛永・正徳の頃(1688~1715)にすでに栽培され、「廣田山の躑躅」として殊に有名であったことから、少なくとも300年以上にわたり人々に慈しまれてきたことが推察されます。
戦前は周辺地区も含め約20万株を誇り、昭和9年には日本植物学の父である一大権威者の牧野富太郎博士もその盛況な様子を遊覧されて「ただ三葉千萬人をおびき寄せ」と一句詠まれて絶賛されました。
しかし近年は周辺地区の開発・宅地造成などに伴い、20万株を誇った躑躅も、廣田神社の神苑に残った約2万株のみとなりました。
廣田神社では市民に協力をお願いし、植栽に力を入れていますが、天然記念物指定当時の社叢林はアカマツ林から形成されていましたが、遷移の進行に伴いアラカシが成長し林内照度が極めて低くなり、コバノミツバツツジ群落は衰退の一途を辿っています。
これはコバノミツバツツジの耐陰性が非常に低く、社叢林の林内照度の低下によりコバノミツバツツジの活性が悪くなり年によっては花を咲かせず、これが立ち枯れの原因となることもあり、次第に個体数と群落面積が減少したと考えられます。
このまま放置すればコバノミツバツツジ群落はさらに衰退し、いずれは広田山から姿を消すことになると思われます。
そこで本群落を保全する為には、照葉樹の伐採によるアラカシ群の林相改良を早急に行う必要があるとの調査結果が出ています。
この調査結果をもとに、社叢林の林相改良を行うにあたり、周辺住民のご理解を頂き、コバノミツバツツジを覆う材木を伐採し、遮光している枝を剪定してコバノミツバツツジの活性化を図る必要性があります。
ここに保存会を立ち上げ、周辺住民の憩いの場としてだけではなく、西宮市の大きな財産であるこの広田山のコバノミツバツツジ群落を後世に残すこと、また上古より詠まれた満山躑躅に覆われ、千紫万紅天に映ずるその美観を取り戻すことが我々の責務であると考えています。